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  • 執筆者の写真Jumpei Matsumoto

新作の撮影中に想う

久しぶりの投稿になります。といっても、まだ2度目ですね。折角、自分の思いや考えを綴る場所を設けたにも関わらず、結局ずっと投稿できずにおりました。


実は新作映画を撮影しています。年明けからその準備がずっとバタバタしていて、情けなくも、心身ともに全く余裕がなかったというのが実情なのです。

映画はすでにクランクインしていて、プロデューサーには負担をかけてしまっていますが、今作は少し長めの期間を設定して、少しずつ撮影することになっています。連日早朝から夜遅くまで一気に撮った経験しかない僕は、新鮮な気持ちで撮影に臨んでいます。題材はシリアスなのですが、日常の積み重ねを描いていく映画です。僕も、撮影を日常の中にうまく溶け込ませて、なんでもない日々を過ごすように撮影をしようとしています。だからこそ、何か豊かさが映り込むのではないかと信じて…。

またしばらくしたら、作品のお知らせをできると思います。



そんな中で、相模原の障害者施設殺傷事件についての報道を見ました。

植松被告への判決を聞き、被害者のご家族の会見を見ながら、色々と思うところがありました。正直言って、とても複雑な気持ちになりました。その気持ちが自分にもよくわからなかったので、取り留めもなく、それを綴ろうと思いました。


僕は、ご縁があって、障害を扱う映画を撮っています。『パーフェクト・レボリューション』を撮ってから、僕の中で障害者の方々への距離はすごく近いものになりました。それまでは障害者認定されているような障害をお持ちの方々が、僕の周りには一人もいなかったけれども、熊篠さんと出会って、それから映画を製作して、公開して、本当に多くの障害をお持ちの方々と知り合いました。

そんな僕にとって、植松被告の思想というのは、全く馬鹿げた、愚かな、知性の欠片も、愛情も存在しない、許されざるナチズムでしかありません。思想のみならず、それを行動に移した彼は、極刑に値する、と僕は強く思います。判決後の会見を聞きながら、被害者の方々の無念さを思うと、涙を抑えることはできませんでした。


しかしながら、僕が感じていた違和感は、植松被告を死刑にしたところで、この事件が暴露した問題の根源は、全く解決されていないだろうということです。

「意味のない命は存在する」という植松被告の考えに対して、死刑という「命を打ち消す」という類似した手段でしか応答できないこと。植松被告のこの主張と似た小さな芽のようなものは、社会のあらゆる場面に根強く存在し続けているであろうこと。障害者だけへの話ではない。経済や効率を考えるときに、誰かと関わるときに、家族と過ごすときに、僕たちはたびたび自分以外の人間の尊厳を剥奪する。その芽は確かに僕の中にもあるだろうと思うのです。


Twitterを見ていたら牧師の奥田知志さんの発言が目に入りました。「命こそ大事だ」ということをハッキリと宣言するべきである、と彼は仰っていました。植松被告が貼ろうとした「不幸」というレッテルに対して、「幸せとは何か」と正面から話し合うことを通して答えるしかないのだ、と。

確かにその通りだと思います。この問題は、植松さんが死刑になったからといって終わる問題ではない。「意味のない命がある」という彼の主張に対して、「すべての命に意味はある」と一人一人が発信続けるしかない。そう信じるしかない。そう生きるしかない。


すべての命に意味はあるし、すべての人生に意味はある。

その中にあらゆる欠陥や傷をすべからく含むとしても、いいやだからこそ、意味がある。


また、撮影が始まります。

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